けんたの気持ち
進行性難病の子どもが20歳になった時、心不全・呼吸不全を起こしました。
それまでは家族だけでケアをしてきたのですが、人工呼吸器が着いて、退院後に「家族だけでは難しい」と感じ訪問看護ステーションを頼むことにしました。
しかし、難病で呼吸器を着けている子どものケアを引き受けてくれるステーションはなかなか見つかりません。運よく自宅から近いステーションが障がい者の研修をしていたと知人から聞いて、無理を言って引き受けてもらいました。それが「けんた」さんとの付き合いの始まりです。
子どもは呼吸器が着いていてもお話しができています。
全く自分では動かせない体を動かしてほしいと頻繁に訴えます。
食事も口からは摂れずに胃ろう注入、気管や口鼻からの痰吸引、呼吸器管理、血中酸素濃度の管理など医療的ケア満載です。
子どもの病気は少しずつ進行していき、子どもの体調と同じように介護にかかりきりの母も神経をすり減らし、自分の体調はそっちのけで介護をしています。
病気、障がいの子どもを持つ母は、何十年経っても「子どもに障がいを負わせてしまった」と自責の念で自分を追い込んでいきます。子どもの病気に良かれと思うものは何でも取り入れ、昼夜問わずのケアをして無理をしていきます。家族の理解がないと生活が成り立たなくなります。
そこを助けてくれるのは訪問看護師さん達。
医療面、生活面でのアドバイスやケアで支えてくれています。
訪問看護師さんは、体調観察、医療的ケア(痰吸引、胃ろう等)、衛生面のケア(ベッド上で洗顔や洗髪、清拭等)。体調悪化時には自宅での点滴。急変時の対応では夜中であっても来てくださったこともありました。
作業療法士さんは、呼吸療法や固くなった筋肉をほぐし、本人の「楽しく過ごす!」ということを常に考えてくれています。
桜の咲くころには近くの公園へ花見にみんなで一緒に行き、ハロウィンやXmasを一緒に楽しみ、音楽が好きな子どもに鍵盤のアプリで弾かせてくれたり、視線を感知してゲームを楽しむ機器を導入してくれたり、楽しく遊びながらリハビリができるように考えてくれています。
子どもにとって今では訪問看護師さんは第二の母であり、作業療法士さんは頼れるお兄さんのようになっています。母が落ち込んでいかない様に何気ない会話で励ましてくれています。
子どもだけでなく母の心にも寄り添っていただいて、一番の理解者であり、信頼できる存在です。(母)